米国国務省IVLP②ワシントンコロンビア特別区
- しずか 平岡
- 8月21日
- 読了時間: 5分
更新日:8月23日
米国国務省より、International Visitor Leadership Program(IVLP)へのご招待をいただきました。今回は、最初の訪問都市であるワシントンコロンビア特別区(ワシントンD.C. )における研修についてご報告します。なお、安全かつ自由に議論することを目的として、一部の研修先については非公開となっています。
ブログ:
「米国国務省IVLP①プログラムについて」(2025年8月2日)
プロジェクト:
Emergency Preparedness Planning for Senior Municipal Staff
(自治体上級職員のための緊急事態対策計画)
目的:
・地方自治体レベルでの緊急事態への備えにおけるベストプラクティス(最善の方法)を共有することで、アメリカの安全とセキュリティにおけるリーダーシップを示す
・自然災害や人為的災害に備えるために、強力なコミュニティリーダーシップを築く取り組みの事例を探る
・移動に制限のある障害者や高齢者を緊急事態にどのように取り込むかについてのベストプラクティスを議論する
ワシントンD.C.における研修テーマ:
・米国の連邦主義
・連邦、州、地方自治体の各機関間の連携
・緊急事態への備えに関する専門教育
【1】アメリカ政府の仕組みや国の政治的・文化的伝統について

アメリカ合衆国憲法修正第1条
「連邦議会は国教を樹立するに至る法律、または、宗教の自由を妨げる法律、また、言論・出版の自由、平和的に集会する自由、救済を求めて政府に請願する権利を求めて政府に請願する権利を制限する法律を制定してはならない。」

・幕末、日米修好通商条約の批准書交換のために派遣された使節団が滞在
・1861年、リンカーンの就任式と南北戦争回避のための平和会議を開催
・19世紀、ホテルに滞在する政治家や官僚に陳情するためロビーで待つ者たちがいた。「ロビスト」という言葉の由来となった。
・1963年、キング牧師がI Have a Dreamの演説を行った際に滞在。

1863年 南北戦争激戦地・ゲティスバーグ追悼式典における演説
The people, by the people, for the people(人民の人民による人民のための)
民主主義の原則を示しており、日本国憲法の国民主権の理念にも通じている。

1865年 2回目の就任演説
With malice toward none; with charity for all
(誰に対しても悪意を抱かず、すべての人に慈悲の心をもって)

1963年 キング牧師による演説I Have a Dream(人種差別撤廃を求める)

2021年アメリカ合衆国議事堂襲撃事件が発生。全米各地で民主主義を守るための集会が行われた。

議員が立法に必要な情報収集や政策立案のための学習を行う
【2】アメリカの連邦政府制度とその分権的な性質
講師:
マイケル・シーゲル氏
政府学教授/元アメリカ連邦裁判所の連邦司法センター教育部門所属

所感:
第一に、合衆国憲法前文は「われら合衆国の国民」はという言葉から始まる。アメリカ合衆国における「国民」とは誰か。建国の始まりは、17世紀以降、ヨーロッパ各地からの移民がアメリカ大陸に渡ることから始まった。さらに1950年以降、公民権運動によってアメリカ社会における「国民」の概念に大きな変化が生まれるようになった。「国民」の概念がその時代を映し出しているように思える。
第二に、来年、アメリカは建国250年を迎える。「共和国として完璧ではないが『努力を続けている』」という教授の言葉が印象に残った。日本国憲法第12条においても「この憲法が国民に保障する自由及び権利は『国民の不断の努力』によつて、これを保持しなければならない。」とある。国家権力によって国民の権利が侵害されないように、国民が自らの権利を自覚し、行使できるように働きかけたい。
アメリカ合衆国憲法前文
われら合衆国の国民は、より完全な連邦を形成し、正義を樹立し、国内の平穏を保障し、 共同の防衛に備え、一般の福祉を増進し、われらとわれらの子孫のために自由の恵沢を確 保する目的をもって、ここにアメリカ合衆国のためにこの憲法を制定し、確立する。
We the People of the United States, in Order to form a more perfect Union, establish Justice, insure domestic Tranquility, provide for the common defense, promote the general Welfare, and secure the Blessings of Liberty to ourselves and our Posterity, do ordain and establish this Constitution for the United States of America.
【3】グローバル災害対策センターの政府および緊急事態準備・管理組織との協力
講師:
リタ・ユーイング氏
アメリカ赤十字社災害プログラムマネージャー
政府パートナー、地域社会の組織、多様なコミュニティと密接に協力し、災害リスクの削減の分野で活動

グローバル災害対策センター(GDCP)の概要
Prepare with Pedro!(若者向け防災プログラム)
Red Cross Mobile Apps(英語版)
所感:
アメリカにおいて大規模災害が発生した際には、1978年に創設された「連邦危機管理庁」(Federal Emergency Management Agency)のもと、ボランティア団体が対応にあたることになっている。全国規模のボランティア団体である「米国赤十字社」は、連邦政府との協定を行った上でFEMAを補完する役割を果たしている。また、ボランティアの管理を行う。
アメリカは多民族国家である。グローバル災害対策センターでは、多様性の理解のもと包括的に対応している。
日本政府主導のもと外国人材の受け入れを加速させる中、外国人を含めた防災のあり方について検討する必要がある。米国赤十字社においては、コミュニティが好奇の目にさらされることのないように配慮がなされている。緊急事態に備え、各コミュニティの代表者との信頼関係を築き、事前に話し合いが行われていくことが求められる。





