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執筆者の写真しずか 平岡

視察報告⑩宿泊税について(軽井沢町・那須町)

宮城県と仙台市は、9月定例会において宿泊税導入のための条例案を提出する予定です。7月8日、宿泊業者でつくる18団体(宮城県ホテル旅館生活衛生同業組合16支部、日本旅館協会の宮城県支部、女性経営者の会みやぎおかみ会)が、導入に反対する要望書を提出しました。宿泊者への負担が増すことで、利用者が減少するのではないかという懸念からです。8月28日、大崎市議会産業常任委員会では、3つの会派より提出された「宿泊税に反対する意見書」について審議が行われ、目的や使い方などの説明が不十分であるとして全会一致で採択されました。

県議会では、経済商工観光委員会や総務企画委員会が、宿泊税を導入した自治体での視察を行っています。7月中旬、私が所属する会派「みやぎ県民の声」では、「宿泊税」を多面的に捉えるために、宿泊税導入を検討している自治体へ赴き、観光協会や宿泊業者へのヒアリングを行いました。今回のブログでは、視察のご報告と宿泊税に対する私の考えをお伝えします。


1.軽井沢観光協会



〇日本国内旅行消費額2020年(試算額)18.7兆円


〇観光は社会すべての産業に影響する創造事業

地域環境:自然保護、景観(美観)等

地域社会:歴史・文化継承・革新・交渉・移住・ライフスタイル・誇り等

地域経済・地域価値:経営・雇用・起業・アライアンス・農商工活性・不動資産等


〇軽井沢町税収入(2020年)92億4000万円

(財政力指数1.52、自主財源比率75.24%、固定資産税約60億円

軽井沢町「宿泊税について」(検討中)


〇「軽井沢ブランド」形成要因(一部紹介)

☑ 立地・位置

☑ 雄大な自然とウエルネス気候

・「屋根のない病院」(天然のサナトリウム)と称え、避暑地・静養地の理想郷を求めた先人

・心身、脳の活性化、転地によるOn・Off効果

・ヒューマンスケールに適した快適空間、ランドスケープが整ったまち

☑ 伝統・歴史

・キリスト教の精神性が浸透する地域文化

・皇室、政・財界、文学者、知識人により愛されたリゾート

☑ 国際性・リゾートMICE

(Meeting、Incentive Travel、Convention、Exhibition/Event)

・外国人の感性に合致する国際色豊かな国土

☑ 落ち着き・気品

・類を見ない厳格な都市計画(ルール)によるリゾート空間の維持

・「人に遊ばず、自然に遊べ」、「万事平等に振る舞え」とする

先人の教えが紳士的な風土を守る

・アカデミックなまちに集うパイオニア

・凛とした雰囲気、静謐、清潔、家族、キリスト教など精神文化の浸透

☑ サロン文化

☑ ライフデザイン

・社会インフラ(都市機能、医療、福祉、アクティビティ等)の充実



2.那須町の宿泊業者(一部紹介)

・原発のホットスポットとなったため、賠償金があったものの3~4年は来客がなかった。さらに、コロナ禍で客足が遠のいた。企業としてはコロナ禍以前に戻ってほしい。

・宿泊税は宿泊業者をただ苦しめる。特にペンションなどの小規模の施設は厳しい。

・那須町のインバウンドが遅れている。町として、県としてどう呼び込むのか。

・既に入湯税150円を徴収している。入湯税か宿泊税のどちらかにしてはどうか。

・宿泊税の使い道を事前に提示し、無駄なものに使わないようにするべきである。



3.(一社)那須町観光協会・DMO(観光地域づくり法人)



昨年9月、観光庁の「観光地域づくり(DMO)」の地域DMOに登録されました。観光振興の財源を確保するため、「宿泊税」の導入を町に求める方針です。


国土交通省観光庁「観光地域づくり法人(DMO)」


「観光客に選ばれる、観光地づくり」(説明会資料より抜粋)

私たちは、持続可能な観光地域づくりを担うDMOとして、那須町を観光で稼げる地域にしていきます。その為には資金が必要となります。町の観光をいっそう活性化していくことを目的に、地域づくりに必要な資金を、宿泊者から「宿泊税」として徴収。宿泊者(観光客)に満足度の高い時間を提供し、また那須に来たい!と思えるような町づくりに取り組みます。



4.「宿泊税に関する講演会および事業者説明会」出席

(一般社団法人那須町観光協会、那須町役場観光商工課)

観光地域づくり法人(登録DMO)一般社団法人那須町観光協会より「宿泊税導入について~検討背景と使途案~」について説明が行われる前に、内閣府などから観光カリスマと認定されている山田桂一郎氏よりご講演をいただきました。現在、山田氏はスイスツェルマット在住です。ここは年間延べ200万泊もの旅行者を迎え入れる世界有数の通年山岳リゾート地です。ツェルマットは、もともと恵まれない土地で貧しい放牧農家しかいなかったといいます。危機感をもった住民自らが一致団結をして、地域を経営するために「ブルガーゲマインデ」という住民組織を結成しました。マーケティングを担当しているのはツェルマット観光局(日本で言うDMO法人)です。地域内でも事業者同士が棲み分けながらそれぞれのポジションを生かした経営をしており、共存共栄を可能としました。



【視察を通して考えたこと】

1.観光戦略とは、地域資源を磨き、地域住民の暮らしを豊かにすることが大前提

現在、宮城県は2025年度に始まる「第6期みやぎ観光戦略プラン」を作成中である。県民に対してビジョンを提示することが適切な手順ではないか。


2.宿泊事業者を支える観光施策の実現

県は、県内の市町村の全首長と面会し、宿泊税の導入に対する賛同を得たという。しかし、観光を担う宿泊事業者の中には導入に反対している状況である。集客に重きを置くあまり、足元を見失ってはいないか。


3.観光基金の創設の検討

那須町では、コロナや災害時などの救助金として、宿泊税の一部を積み立てることを検討している。

先日、能登半島地震の被災状況を視察するために和倉温泉(七尾市)を訪問した。宿の営業再開までに約3年がかかるという。復旧にあたる作業員やボランティアの滞在場所がないと復興は進まない。早期の営業再開によって被災地を応援することにもつながる。



まもなく9月定例会が始まります。開会まで、念入りに検討を重ね、会派としての対応を協議します。

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