私が掲げる政策の一つに「グローバルシチズンシップ教育(地球市民教育)の充実と自分ごと化へ」があります。グローバル教育について知見を深め、今後の宮城県の教育について考えるために、3月末に実施したヒアリングについてご報告いたします。
日本における国際理解教育
1974年
「国際教育勧告」(ユネスコ)採択、「国際理解教育」の展開(人権・平和の追求)
2002年
「総合的な学習の時間」導入、学習指導要領の中で「国際理解」について言及
2011年~
グローバル人材育成に関する議論が活発に
2014年度~
文科省「スーパー・グローバル・ハイスクール」事業開始
グローバル教育(Global Education)
地球の利益の観点から自覚と責任をもって連帯や協力を求め、問題解決に向かうグローバル・シティズン(地球市民)を育成する教育。欧米では、1960年代から取り組まれてきた。日本では1990年代後半より「グローバル教育」という用語が普及している。
「欧州グローバル教育会議」(2002年)において、グローバル教育とは「世界の現実に対して全ての人々の眼と心を開かせ、全ての人のためにより大きな正義、平等、人権が必要であることへの気付きを促すこと」と定義された。開発教育(Development Education)、人権教育(Human Rights Education)、持続可能性のための教育(Education for Sustainability)、平和と紛争防止のための教育(Education for Peace and Conflict Prevention)、異文化間教育(Intercultural Education)を含む。
Global Education in Europe to 2015, Council of Europe, https://rm.coe.int/168070f089(参照:2024年4月20日)
視察報告
〇ヒアリング対象者
石森広美氏(北海道教育大学/英語科教育・国際理解教育担当)
〇プロフィール
1993年3月
学士(筑波大学)
1993年4月~2022年3月
宮城県立公立学校教諭
1999年7月~2001年10月
在シンガポール日本語教師非常勤講師
2012年3月
博士(教育学)
2012年4月~
東北学院大学非常勤講師
2016年4月~
宮城教育大学非常勤講師
2022年4月~
北海道教育大学准教授
石森氏は、日本シティズンシップ教育学会副会長、日本グローバル教育学会常任理事を務めており、長年、宮城県の国際理解教育を牽引されました。「グローバル教育が育む力は、日常生活においても大いに役に立ち、自分の人生に彩りを添え、良好な人間関係の構築やより良い社会づくりに活かされる。」という確固たる信念をもっておられます。日本では、受験勉強を経て進学した後に、学ぶ意味や人生の目標を見失い、無気力に陥る生徒たちがいます。石森氏は、25年以上にわたり、国際理解教育を通じて生徒たちが生きる意味に出会うお手伝いをしてこられました。
1975年に「宮城県国際理解教育研究会」が設置されました。私も教員時代には、石森先生(事務局長)のもとで幹事として関わる中で、国際理解教育の理念や可能性について教えていただきました。生徒研修や弁論大会等の機会を通じて、生徒の可能性を広げたり、Global Mindを育成したりするだけではなく、教員にとっても、公立・私立の教員が交流し、学び合う機会となります。勤務校を離れ、学校外の世界に目を向けることで視野を広げることができるのです。
グローバル教育は、国や地域を超えて、世界全体にとってのCommon Good(共通善)を追求し、長期的なスパンでものを見るように努めます。共通善に基づく政治からは、自分が住む地域さえ傷つかなければよいという考えには陥りません。グローバルシチズンシップ教育は、社会の不公正への憤りから始まり、公正で持続可能な社会を目指し、自らの言動に責任をもった地球市民としての行動を促します。グローバル人材というと、英語力に着目されがちですが、グローバル教育とは、外国のことだけを学ぶのではなく、グローバルの中の地域や身近な(ローカル)テーマに着目し、当事者意識が育まれるようになります。
分断が進む世界において、対話を通じて、共通善に向かって、新たな価値を共創できる地球市民を育成することを目指し、今後も宮城県のグローバルシチズンシップ教育を奨励していきたいと思います。まずは、宮城県の実態調査を行った上で、議会からグローバル教育の共通理解を図ってまいります。
〇参考文献
・石森広美『生徒の生き方が変わるグローバル教育の実践』株式会社メディア総合研究所、2015年。
・日本国際理解教育学会編『国際理解教育を問い直す』明石書店、2021年。
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