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執筆者の写真しずか 平岡

視察報告④インクルーシブ教育(根室市立花咲港小学校)

4月中旬に、根室市立花咲港小学校を訪問し、根室市教育委員会教育長波岸克泰様、教育秘書課長佐藤健史様、髙田真弓校長先生にご案内いただきました。根室市は、一人ひとりの可能性が育まれ・花開くまちづくりをめざしています。令和5年度根室市教育行政方針において、花咲港小学校をインクルーシブ教育を柱とした新たな教育スタイルを創出する学校と位置付けました。花咲港小学校では、実践理念として、一人ひとりを尊重しながら自律と共生を学ぶ「イエナプラン」を参考にしています。


波岸教育長は、従来の教育をジグソパズル(1つしかない答えを探す)、新しい教育をレゴブロック(答えを自ら創造)に例えます。教師が今までの価値観や学習観を変える必要があります。子どもたちが「違う」ということを認めることが大前提となります。




≪根室市情報≫

人 口:23,006人(令和5年12月31日) 

※10年間で約10,000人が減少

小学校:7校

児童数:889名(令和3年時点)


≪第9期根室市総合計画≫

〇個性を伸ばし豊かな心と完成を育むまち

〇基本方針

①社会を生きる力

②市民みんなが学び、高め合える生涯学習の振興


≪インクルーシブ教育≫(配布資料より引用)

障がいの有無はもとより、家庭環境、発達の違い、学習の得意不得意、学習内容の習得の速さの違い、人種の別や男女差、性についての指向性、社会的地位や背景の違いなど、あらゆる差別を乗り越えて、一人ひとりの個性と価値を認め、自分らしくあるための選択や決定を尊重する教育。


≪導入の経緯≫

令和に入り、少子化を理由に統廃合が検討されていた。同時期に、義務教育段階の特別支援学校の設置を求める署名13,704筆が寄せられた。

市民との対話を重ねながら誕生したのが、現在の花咲港小学校である。校長1名、教頭1名、教員2名の体制で教育活動を展開。昨年度までの校長が、市内中学校の校長に赴任したこともあり、小学校との連携が期待される。


≪花咲港小学校の取組≫

◎    多様性こそが学びを豊かに

✕ 一律の評価、できる子・できない子


【対話・遊び・協働体験・学び合い・助け合い・自分のニーズによる学び】

【自己理解・他者理解】

【自尊心・自己肯定感】

【批判的思考】

【他者と共に生きる能力】


1.生活ユニット

異年齢集団のため、学習や生活において、教え合いや助け合いが自然発生。

【低学年ユニット】

・1・2年複式学級、特別支援学級

・学習の基礎・基本を丁寧に始動


【高学年ユニット】

・3・4年複式学級、5・6年複式学級、特別支援学級

・児童の意欲・自主性を最大限に尊重


2.みなとーく(対話)

児童間で自分の考えや弱さ・悩みを話したいときは話す時間。教師の役割は環境づくりと支援を行い、心理的安全性と信頼関係の構築を図る。


3.学習

(1)マイプラン学習

【低学年】

3年生から本格的に始まるマイプラン学習に向け、自分に合った学習計画を立て、学習を進める。

【高学年】

自ら単元の学習計画を立て、自分に合ったペースで学習を進める。教師はそれぞれの状況に応じて支援を行う。学習者自ら問いを立て、次につなげるための学びの振り返りを行う。


(2)みなとっこアワー(1日3~4時間)

自ら時間割を設定(国語・算数5時間と社会・理科3時間)し、自分に合った順番・場所において自分の学びを自分で深めていく。教師はそれぞれの状況に応じて支援。


4.探究学習Mスタディ(年2回)

身近な日常生活における子ども自身の問いを仲間と協働して解決。直接体験を重視した教科横断的な学習。


①花咲港ではどんな魚が獲れるの?(問い)→実際に漁港へ(探究)→発表

水族館をつくってみた!

②ポイ捨てをへらすために自分たちにできることは?(問い)

→クリーン作戦、ポスター作成(計画)→市内においてポスター掲示依頼


5.その他

(1)Mプロジェクト型特別活動

自治的な集団を形成し、主体的に協働活動を展開。教師は子どもの意志を最大限に尊重し、サポート役として支援。

(例:ひみつきちプロジェクト、おかしづくりプロジェクト等)


(2)行事立案はこども主体

たのすぃ~運動会!!プロジェクト、たのすぃ~文化祭プロジェクト


(3)社会の創り手として~地域協働事業~

地域の方と共に活動することで、社会の創り手となる意識と根室人としての誇り・愛郷心を育む(花壇整備、防災訓練、お仕事体験、交通安全街頭運動、神社祭、高齢者へ年賀状)


(4)遊びと学びがひろがる環境づくり


子どもたちがつくった遊び場!(ホール)
図書室も遊び場のひとつ!

インクルーシブ(inclusive)とは、「包含的な・包括的な」という意味があります。対義語は、「排他的な・排除的な」を意味するエクスクルーシブ(exclusive)です。社会の中には、様々な背景をもつ人たちが生活しています。もはや同質性の高い集団を基盤とするコミュニティをつくることは過去の産物です。排除されることを恐れ、息をひそめるかのように生きる日本人。「不登校、いじめ、自殺」というかたちで、子どもたちは悲鳴を上げているのではないでしょうか。大人の都合だけで、子どもたちの教育や学校のあり方について考えるのではなく、子ども起点の教育のあり方を再考することが求められます。花咲港小学校において、子どもたちが、夢中になって遊び、イキイキと学んでいる姿を見て、その思いは確信に近づきました。


後藤咲子仙台市議と共に

先日、宮城県内でインクルーシブ教育を導入している「ろりぽっぷ小学校」(仙台市太白区坪沼)の視察を行いましたので、改めてご報告します。

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