10月1日(火)一般質問に立ち、大綱3点より8つの質問を行いました。今回は、一般質問の要旨、質問と答弁について概要をご報告いたします。
一般質問と答弁の要旨
現在は、自身のメンタルヘルスと向き合う時代である。厚労省によると、生涯を通じて5人に1人が「こころの病気」にかかるといわれている。近年、「こころの病気」が増加する中で、教育現場では、高校の学習指導要領が改訂され、約40年振りに、保健科教育において「精神疾患」について扱うこととなった。今回の一般質問では、宮城県政が抱える「こころ」にまつまる課題について取り上げる。傍聴席やインターネット中継からご参加いただいている方々が、県政の課題や実情について少しでもご理解いただけるように全力を尽くす。
大綱一「民意と地方自治」
要 旨
県が進める仙台医療圏の4病院再編(2019年~)や宿泊税(2018年~)について検討が進められている。コロナ禍において、「医療」や「観光」について県民を巻き込んだ議論を展開することは困難であったと推察する。しかし、県民の立場からすると、2023年にパンデミックの収束に近づいたのも束の間、唐突な印象を受ける結果となった。これが「議論や説明が不十分で拙速である」と言われる所以である。
9月12日に「宿泊税導入に係る県民説明会」が行われた。質疑応答の中で、説明会開催の周知が不十分であったのではないかとのご指摘があった。最も身近な情報収集手段であるSNSを通じた県からの発信は確認できない。
「主なソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率」(総務省情報通信政策研究所公表)
第1位 LINE(94.9%)
第2位 YouTube(87.8%)
第3位 Instagram(56.1%)
第4位 X(49.0%)
第5位 Facebook(30.7%)
今回、経済商工観光部富県宮城推進室より、自然防災アプリの普及を目的とした「地域ポイント付与事業」を実施するために、3億円の9月補正予算が求められている。新たな事業を県内全域で展開する際、県民への周知を行うために膨大な予算をつけることが最良の方策といえるか。
質問:
SNSは基本的に無料である。地方自治の主体である県民との繋がりを深めるためにも、情報の一元化を行ったうえで、SNSを通じた県による発信を強く求める。知事のご所見をお伺いします。
答弁:村井知事
県では、みやぎ県政だよりや県政ラジオ番組、ホームページ、プレスリリーフ、メールマガジンなどに加え、最近はYouTubeやInstagram、XなどのSNSを活用した情報発信に力を入れている。本日からは、新しい広報媒体として、デジタル身分証アプリを活用した「宮城県からのお知らせ」の運用を開始。県民の皆様お一人おひとりの属性や趣味・関心に応じて、必要な情報を直接お手元に届ける。今後も、より「伝わる広報」を目指す。
平岡:
能登半島地震で災害時のデマ情報で現場が混乱した。県からの正しい情報が確実に届くように。ポケットサインは、県からのお知らせ、インフラ通報、アンケート等、便利な機能を備えているが、マイナンバーカードは約2割が未収得のため、利用できない方もいるだろう。LINEは高齢者の約8割以上がほぼ毎日利用しているというデータがある。導入を前向きに検討していただきたい。
「デジタル身分証アプリ」
要 旨
9月3日に「県民と宮城県議会議員との意見交換会」が開催された。テーマ「考えよう どうしたら県議選の投票率を上げることができるのか」に沿って、16歳から28歳の参加者よりご意見をお伺いした。「若者に届く情報発信が必要」であるとの声も。県民に当事者意識をもっていただくことは、住民自治を行う上で必要不可欠な要素である。
「病院再編」に関する地域説明会では、1月26日に開催された第3回住民説明会までは「ハイブリッド開催」であったが、3月下旬に富谷市で行われた説明会以降は配信されなかった。会場の規模と予算が理由であったとのことであった。移転候補地周辺に住む子育て世代からは、ハイブリッド開催の希望が出されており、事前に保健福祉部へ依頼していたが実現しなかった。
質問:
「地方自治の主体である県民との繋がりをさらに深める情報発信」を行うため、今後、県民説明会を開催する際に留意すべき点は何か。
答弁:保健福祉部長
仙台医療圏の病院再編に係る地域説明会について、病院再編の背景や目的などの説明を行うとともに、意見交換を実施し、地域住民の理解醸成に努めてきた。1回目と2回目は、参加者数を超える懸念があったため業務委託によりオンライン配信を実施した。今後は、より多くの方々に参加いただけるよう、開催会場や日時、周知方法などを十分に精査するとともに、資料や質疑応答内容の公表のほか、アーカイブ動画配信の実施などについても検討し、子育て世代の方々も含め、県民の皆様に地域説明会の内容を広く周知できるように努める。
平岡:
宿泊税の県民説明会では2時間の予定を延長して3時間実施できた。病院再編説明会における常套句である「会場の都合により」で打ち切られなず、十分な時間が確保できたので、双方向のやり取りができたのではないか。
再質問:
私はPCを持ち込んで記録を取っていた。8名の方が発言していたが、5番目の発言者の記録が削除されている。保健福祉部長は把握しているか。
保健福祉部長:
ICレコーダーで記録を取っていたが、一部聞き取りにくいところがあった。
平岡:
精神障害当事者の方からの質問であった。
①旧優生保護法のもと、宮城県では1406件の優生手術が行われた。全国で2番目に多い件数である。
②宮城県黒川郡大和町にある障害者支援施設「宮城県船形の郷」のために、今まで自治体で何をしてきたか。
③県立精神医療センターは、県内唯一の公的単科精神科病院である。他の総合病院とは異なり、当事者、家族・友人にとって「最後の砦」である。
④対話がしたい。
オンライン配信については、外部委託による大それたものでなくてもよい。現在は、学校現場でさえもオンライン授業ができる時代である。お金をかけずに配信は可能であるので、ぜひ今後はハイブリッド開催をお願いしたい。
「宮城県総務部広報班」
「仙台医療の病院再編_地域説明会」開催(アーカイブ動画あり)
「仙台医療の病院再編_地域説明会(第4回)」開催
「仙台医療の病院再編_地域説明会(第5・6回)」開催
「社会福祉法人宮城県社会福祉法人障害者福祉支援施設宮城県船形の郷」
質問:
今年度「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築推進事業」(協議の場の開催、心のサポーターの養成、ピアサポートの活用事業等)が計画され、49,204,000円の経費が計上されている。宮城県全域で「にも包括」を推進する上で、既に実施したこと、また今後計画していることは何か。
答弁:保健福祉部長
市町村を中心とした取組を支援するため、5年程度を見越した財源を基金化して確保し、事業を集中的に進めている。今年度は、仙南・仙台圏域をモデル地域として、仙台保健福祉事務所と精神保健福祉センターにコーディネーターを配置し、国が任命したアドバイザーとともに、圏域の課題を解決するための体制の充実を図った。
県全域で「にも包括」の構築を推進するため、8月に市町村担当者会議を開催し、県内市町村の好事例を共有する機会を設けたほか、心の不調や悩みを抱えている人をサポートする「心のサポーター」の養成研修を、8月に大河原町、9月に仙台市で開催し、延べ148人が受講。
今後は、医療保護入院者を対象とした訪問支援や、当事者団体等が行うピアサポート活動の促進、地域移行に取り組む医療機関の体制整備を進めるとともに、グループホームやデイケア、訪問看護等の基盤整備などに取り組む。
平岡:
厚労省による「にも包括」の構築イメージには「地域の助け合い」が含まれている。市町村などの基盤自治体を基本として、市町村で進められることになっているが、「行政の責任放棄」ではないかとの声も地域から聞こえている。市町村によってサポート体制の開きが出ないように、県全域におけるバックアップを行っていただきたい。
令和5年度宮城県精神保健福祉審議会「精神障害者にも対応した地域包括ケアシステム構 築に係る事業の方向性について(案)」(宮城県保健福祉部精神保健推進室)
令和6年度宮城県心のサポーター養成研修会のお知らせ
医療保護入院制度
日本ピア・サポート学会
大綱二「宮城県の精神保健医療福祉政策」
要 旨
欧米諸国では、1960年代から80年代にかけて、精神科病床を減らして入院から地域中心へ移行した。日本では1960年の病床数が9.5万床であったが、現在は約32万床である。当時の精神障害者隔離政策の背景として、精神病が遺伝性の人格の荒廃に至る不治の病であるという偏見による社会的要請があげられる。精神疾患からリカバリーに向かうためには、隔離収容や服薬で留まるのではなく、その人らしい人生や希望、誇りを自らの手に取り戻すことである。2017年に厚労省が「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の理念を掲げ、精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが安心して自分らしく暮らせる地域をつくるため、市町村を中心に構築が進められることとされている。
「地域包括ケアシステム」とは、おおむね30分以内の日常生活圏で、個々人のニーズに応じて、「介護」「医療」「予防」サービス、「住まい」「生活支援・福祉サービス」の5つの構成要素が相互に関係し、連携しながら生活を支える体制である。厚労省によると、入院患者の再入院率は、退院後6ヶ月時点で約30%、1年時点で約37%であるという。名取市は県内随一の「にも包括」の先行事例ともいえる。宮城県の当事者の方々が、人生を再構築するために共に歩んできた。病院の移転は、環境の変化に弱い当事者にとって深刻な問題であり、病症を理由に移動することも困難である
質問:
精神障害者の方々は、見通しが立たないことに強い不安を感じやすく症状の悪化を招く。知事による本定例会の「知事説明要旨」によると、救急医療及び精神医療を中心に、具体的に論点を確認しながら、順次検証を行っているとのことであった。結論を出すめどは。
回答:保健福祉部長
県立精神医療センターの富谷市への移転・建替えについては、令和元年度の「あり方検討会議」の提言に基づき、老朽化した施設の早期建替えや、東北労災病院との合築による身体合併症への対応能力の向上などを目指して取り組んでおり、労働者健康安全機構との協議を継続している。
現在、労働者健康安全機構では、東北労災病院の富谷市への移転について、労災病院グループ全体の経営状況を踏まえた将来の病院経営の見通しなど、様々な視点から慎重に検討を重ねている。
県は、関係者の意見を伺うとともに、身体合併症への対応等の課題も含めて、柔軟かつ多角的視点で検討を進め、当事者の皆様に方向性を示す。
「県立精神医療センターのあり方検討会議について」
「独立行政法人労働者健康安全機構東北労災病院」
大綱三「宮城県の子ども政策」
要 旨
昨年度「こども基本法」が施行され、こども家庭庁が発足した。基本法の目的は、「生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、社会全体としてこども施策に取り組む」と定められている。第2条では、子どもとは「心身の発達の過程にある者」とされている。国会審議において、それぞれの子どもの状況に応じて必要な支援が、特定の年齢で途切れることなく行われていくこととした。少子化対策がしきりに叫ばれる昨今であるが、この世に生を享けた子どもたちにとって「こども基本法」が唱える「将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会」が実現しているかというといささか疑問である。
質問:
「こども基本法」第10条では、都道府県は「こども計画」を定めるよう努めることとされている。本県においても、「宮城県こども計画(仮称)」の策定にあたり、株式会社サーベイリサーチセンター東北事務所に委託し、策定のための調査にあたる。知事は、現在、宮城県の子どもたちを取り巻く課題をどのように把握され、課題解決に向けて取り組んでおられるのか。
答弁:知事
急速な少子化の進行に加え、児童虐待の増加、震災の影響により困難を抱える子ども・若者の存在など、多くの課題があると認識。これらの課題に対応するため、令和3年度を初年度する「新・宮城の将来ビジョン」において「社会全体で支える宮城の子ども・子育て」を新たな柱として位置付けるとともに、関連施策を継続的に実施できるよう「次世代育成・応援基金」を創設。
今年度は、出産後における母子の心身のケアや、育児サポートに大きな役割を果たす産後ケア事業所を対象に、受け皿拡大への支援をスタート。少子化対策市町村への支援を開始。少子化対策市町村交付金の規模を大きく拡充するなど、地域の実情に応じた少子化対策を支援。
「都道府県こども計画」については、今年度中の策定に向けた検討を進めている。国のこども大綱の内容なども踏まえながら、みやぎの将来を担う子どもの健全な育成と、子どもを生み育てやすい地域社会づくりを推進する。
「新・宮城の将来ビジョン」
「令和6年度宮城県こども計画(仮称)策定のための各調査に係る実施・集計・分析業務」企画提案募集
「宮城県こども計画(仮称)」の策定方針
要 旨
2027年度、本県において、現在、中学1年生の生徒が高校へ進学するタイミングで「新たなタイプの学校(idealスクール)」が開校される。「個に応じた多様な学びと、学習者中心の支援により、生徒の自律的な学びの実現と、将来の社会的自立に必要な資質・能力の育成」をめざす学校である。
質問:
①教育長は「教育」をどのように定義づけておられるか。
②ideal schoolのideal = 理想的な学校をつくるために、生徒が主体的に学校づくりに参加できることが望ましいのではないか。
③第1回目の学校説明会の開催や募集要項の公表はいつ頃を予定しているか。
答弁:教育長
①教育とは、子どもたちが、夢や希望の実現に向けて、主体的に学び続ける力を育てることであると考える。そのためには、子どもたち自身が課題を見つけ、自ら考え、他者と協働しながら解決できる力を身に付けられるよう、教員が子どもたちと向き合い、課題や悩みを共有し、一人ひとりがもつ大きな可能性を引き出し、広げていく教育を行うことが大切であると考える。教育は明るい未来のためにあり、学校は、子どもたちが、夢や希望を実現するために、学び、成長し、未来を創る場所であってほしいと思う。
②生徒自らが高校生活をデザインし、夢や希望を実出来るコンセプトとしたアイディアルスクールの開設に向け準備を進めている。生徒が主体的に学校づくりに参加することは、学校生活に対する意欲や自己肯定感を高めるとともに、責任感や社会性を育む良い機会になるものと認識。
生徒が自分たちの学校をより良くするためのアイディアを出し合える環境づくりに向けて、生徒会活動を通じて学校のルールづくりや環境整備に直接参加できようにするほか、ホームルームや学校行事の内容についても、生徒たちの意見を柔軟に取り入れられるにようにしたいと考える。
アイディアルスクールで学んだ生徒が、将来の社会的自立に必要な資質・能力を身に付け、自分の夢や希望を実現できる学校となるよう、引き続き準備を進める。
「新たなタイプの学校(idealスクール)の新設について」
③募集方法等については、令和7年の夏頃までにおおまかな枠組みを公表し、令和8年3月までには、詳細な選抜方法等を公表する予定。第1回目の学校説明会は令和7年の秋頃の開催を予定し、開校前年の令和8年度には、複数回開催したいと考えている。
平岡:
「新宮城の将来ビジョン」では、「子ども・子育てを社会全体で切れ目なく応援する環境をつくる」とのビジョンが示されている。令和5年度の評価によると、全130の施策のうち教育が28と全体の約22%を教育が占めている。28施策のうちDの評価がついているのは16、そのうち義務教育課が13である。教育の成果が出るまでには時間がかかるものであると理解している。社会全体でビジョンを共有し、子ども・子育てを応援する環境をつくれるとよいと思う。子どもたちや保護者、学校現場の教員に過度なプレッシャーがかからないことにも留意していただきたい。
令和6年3月に出された「第2期宮城県教育振興基本計画~志を育み、明るい未来の創造へ~」の最終案には、小中高生29930名を対象とした「こどもアンケート調査」の回答が掲載されている。自由記述蘭には、「授業づくりに関すること」約900件、「ICTに関すること」約350件、「体験活動に関すること」約200件、「いじめに関すること」約200件が寄せられている。子どもたちにとって関心が高いテーマについて受け止め、取り組んでいただきたい。
結論:
今年7月3日、旧優生保護法は憲法違反とし、国に賠償を命じる最高裁判決が出された。宮城県内在住の飯塚淳子さんは、「良かったなあって、じんときました。泣きました。人生は返ってこないんですけど、でも、良い判決で良かったと思ってます。」とのコメントを残しておられる。宮城県に生まれた子どもたちの人生が、政治によって奪われることがあってはならない。「将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会」の実現をめざした、心ある県政運営が行われることを切に願う。
今回の一般質問にあたりヒアリングにご協力いただいた、宿泊事業者、精神保健医療福祉関係者、精神障害当事者、教育関係者の皆様に感謝申し上げます。