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執筆者の写真しずか 平岡

大海の一滴

更新日:2023年8月1日

教員3年目の夏、私はインドへのひとり旅にでかけました。2010年当時、「マザー・テレサ生誕100年」を記念して開かれた沖守弘さん(1929-2010)の写真展がきっかけでした。沖さんがレンズ越しに見たインドの世界を実際に見てみたいと思ったからです。


インド滞在中、西部に位置するムンバイを訪れました。2008年にムンバイでは同時多発テロが起きています。テロが起きたホテルから見渡せるアラビア海近くの遊歩道は、多くの人たちが集まる人気スポットです。のんびりとしたその光景からはテロの脅威とは無縁の世界に見えました。




ある日、タクシー乗車中に信号を待っていると、窓を叩く小さな音が聞こえました。外を見ると、10歳程の女の子の姿がありました。上半身を隠しながら何かを訴えています。たった数秒間のできごとでしたが、その時のことが忘れられません。夜になると町の様子が変わります。観光客を相手に路上で花を売る子どもたち。1枚の段ボールに身を寄せ合って寝ている親子。大学時代にカンボジアで出会った無力な自分に再び出会うこととなりました。



インドにおける貧困の原因には、宗教、地域、カーストによる対立やジェンダー格差、世代間格差、情報格差などが挙げられます。背景は違えど、日本国内にも類似した課題が散見されます。私は、大きな課題を前にただ立ち止まるのではなく、微力ながらも、地元宮城から一歩前に歩みを進めます。

「私たちの行いは大海の一滴にすぎない。でも、何もしなければ、その一滴も生まれない。」

― マザー・テレサ




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